生成AI(chatGPT)によるパーソナライズマーケティング

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コロナ禍以降、マーケティングの手法が大きく変わったと見る人もいます。コロナ以前には効果的だった媒体を使っても、コロナ禍後では全く反響がないということも珍しくありません。
多くの業種でアナログ媒体からデジタル媒体への移行が見られたのではないでしょうか。もちろん、これはマーケティングの媒体に限った話ではなく、顧客との接点すべてがデジタル化してきています。
これを変化と見ている人も多いでしょう。確かに変化と言えば変化でしょうが、私は変化ではなく加速だと捉えています。デジタル化の波はバブル崩壊後のインターネットの登場から始まり、次第にアナログ領域を駆逐してきました。コロナ禍が起こっても、起こらなかったとしても、デジタル化の波は数十年前から来ていたのです。従って、コロナ禍以後の変化はデジタル化への変化ではなく、デジタル化の加速と言えます。

前置きはさておき、今回はデジタル化加速期におけるマーケティング手法を紹介します。
電通社の調査レポートによると、2021年にはインターネット広告投資額の総額がオールドメディア四媒体(テレビ、新聞、ラジオ、雑誌)を超えました。(図表1)

図表1 電通調査レポート 2021年日本の広告費 をもとに作成

より多くの人にリーチするためには、マーケティングではSNSのようなデジタル媒体に出稿すべきだと言えるでしょう。テレビ離れが進んでいると言われて久しいですし、現に私はテレビを持っていません。テレビを見なくなってから6年近くになります。
我が国で普及しているSNSはいわゆる五大SNSと言われる、LINE、YouTube、X、Instagram、Facebook(注:日本国内における2020年前後の月間アクティブユーザー数順)です。中でも、Instagramでの広告出稿について紹介します。

Instagramで広告を出稿する際、どのようにターゲティングを設定しているでしょうか。多くの人が、性年代やエリアによる単純な絞り込みにとどまっていないでしょうか。今回ご紹介するのは、そういったぼやけたターゲティングではなく、心理プロファイルに基づいた絞り込みを行い、より具体的にターゲットを定める方法です。
方法は非常にシンプルで、かつ無料でできる手段もあります。マーケティング担当者はぜひ今日から試してみてください。効果は絶大です。

ターゲットを複数のセグメントに分け、それぞれのセグメント向けにコンテンツをカスタマイズして配信するだけの方法です。
このアプローチは、英国のコンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカ社が米国大統領選でトランプ陣営のコンサルティングを担当し、Facebookを使用してヒラリー支持者とトランプ支持者をプロファイリング、 有権者を複数のセグメントに分けてそれぞれに異なるアプローチを採用した事例に基づいています。
この方法により、当初ヒラリー氏が有利とされていた見通しを覆すことに成功しました。行われた作業は、セグメントごとに配信コンテンツをカスタマイズするというシンプルなものですが、ターゲットを適切にセグメント分けすることで大きな効果を発揮しました。
実はこの手法は、マーケティングの基本原則に則っていて、広範囲にわたる一般的なアプローチよりも、できる限り具体的なターゲットに焦点を当てた方が効果的であるという原則に基づいています。ターゲティングは具体的であるほど良く、究極のマーケティングはある特定の個人に特化して書かれたメッセージなのです。

それでは以下に作業手順を記載します。

①お客様の声を収集

まず、マーケティングを行ないたい商品を実際にこれまで購入していただいたお客様の声を集めます。LINEメッセージ、アンケートへの記入内容、何でも構いませんが、顧客が発した言葉に発信者側で勝手に解釈を加えないことが重要です。言い回しを変えず、文法が不正確であっても、ありのままの生の声をできるだけ多く集めます。
注意すべき点は、あくまでも商品を購入した人たちからの声であることです。追客中や管理顧客からの声ではダメです。

②カテゴライズ

集まった声は、そのままchatGPTに突っ込み、解析しカテゴライズします。無料版でも問題ありません。
「以下の文は、●●商品の購入者の声です。これを心理プロファイル分析し、5つのカテゴリーに分けてください」のように入力し、その下にお客様の声をコピー&ペーストすれば問題ないでしょう。この際、カテゴライズする数は5つ以内くらいに限定した方が良いでしょう。細かいほど良いというわけではありません。

③カテゴリーごとに広告配信

Instagram広告を配信する場合、趣味嗜好などに沿ってターゲティングが可能です。先に5つに分類したカテゴリーのセグメントに対して、Instagramが提供する趣味嗜好と関連が強そうな項目をchatGPTを使って紐づけていきます。星取表などで一覧化してもらうと見易いでしょう。
その分析結果を基に、セグメントごとに5つの広告を配信するイメージです。クリエイティブもセグメントごとに5つ用意していくと高い成果が期待できます。

私の実践結果としては、従来のぼんやりした広告配信に比べて、セグメント別配信では最低でも1.8倍、最大で8.3倍のリーチを獲得しています。(図表2)

図表2 セグメント別広告運用の結果

もう一度言いますね。最低でも1.8倍、最大で8.3倍のリーチです。
テクノロジーは駆使してなんぼです。過去の成功に固執し、古い方法にこだわっていると、新しい時代を生き抜くには苦労するでしょう。四の五の言わず新技術はどんどん取り入れて時代に即したやり方を試してもらえればと思います。

念のため、リーチ数は増えたもののクリック数が伸び悩んだり、クリック数は増えたもののコンバージョン数が少ない場合は、ライティングやクリエイティブの問題と言えるでしょう。