リーダーは同調しない

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ご存じの通り、我が国は島国です。周囲が海に囲まれているため、外敵からの攻撃を受ける機会は、大陸に位置する国々に比べて格段に少なくなります。そのような安全な環境で長年暮らしていると、その島(地域)特有の文化や考え方が根付き、外敵から身を守るための改善活動への考慮が後手に回ることがあります。この独特な考えが、いわゆる「空気」、つまり周囲に同調する空気やムラ社会の空気を形成します。この種の空気感は、国という大きな単位だけでなく、会社組織のような小さな単位にも存在します。ムラ社会では競争を避け、周囲に溶け込んで同化する(変化を嫌う)ことが選ばれます。競争が欠如する、要は外敵がいない状況では、空気を乱すことが利益につながらないからでしょう。ムラ社会では、物事を円滑に進めるためには、空気に流される方が楽なのです。
以前、ある離島を訪れた時のことでした。そこには競争もなければ、商売敵も存在しませんでした。皆が仲良く助け合ってと言えば聞こえは良いですが、現状に甘んじ、向上心がなくなっているようにも感じました。従って、新しい考え方や生産性の向上を目指すノウハウはまったく受け入れられませんでした。
しかし、周囲に同調するだけでは物事は改善しません。改善がなければ、いずれ廃れるか、黒船が来たときに一掃されるかのどちらかでしょう。生き残っていくためには、改善を重ねる以外に方法はないと思います。それが進化するということです。進化がなければ生き残ることはできません。あるいはガラパゴス化するか。進化論が示している通りです。

さて、改善活動についてですが、「赤信号、皆で渡れば怖くない」という考え方で多数決によって行動しても、改善は進みません。客観的な事実に基づき、根拠のある改善に向けてリードするリーダーが必要です。リーダーと呼ばれる人は、組織を最良の方向に導かなければなりません。それには痛みが伴うことがあります。一時的な薄利や私利私欲のために組織を誤った方向に導かないためには、時には嫌われる勇気を持つことが必要です。周囲との軋轢を避けたいと思う人は、同調の道を進めばよいでしょう。しかし、リードして改善の方向に導きたいと思うなら、痛みから目を背けてはいけません。
人生は一度きりです。他人に同調して使われる受動的な人生よりも、たとえ一時的に反感を買うことになったとしても、自らの力で道を切り開き、リードする能動的な人生の方がはるかに面白いに決まってます。

先にも述べたように、改善には痛みが伴います。改善の過程である程度の厳しさは不可欠です。たとえば、仲が良かった後輩に戦力外通告をしなければならない状況が訪れるかもしれません。客観的な事実から導き出される答えが、ある人にとっては一時的に厳しい選択かもしれませんが、断腸の思いで実行しなければならない時があります。それは冷酷に見えるかもしれませんが、戦力外通告の理由について考えてみてください。活躍できない場所で長い時間を過ごすより、早く活躍できる場所に移る方がその後輩にとっては有益です。それが真の優しさではないでしょうか。リーダーはこの事実を理解し、馴れ合うムラ社会の同調圧力を跳ね除け、一時的に非情になることが出来る人なのです。

参考文献:結果を出すリーダーはみな非情である