愛人ビジネスから学ぶ競争力強化
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サービスを受けたら、その対価としてお金を支払うはずです。対価がお金でない場合もあるかもしれませんが、サービス提供者とサービス受給者の間では双方納得のうえで対価が等価交換されるはずです。対価が明らかに釣り合わなければ、そのサービスは長く続かず、いずれ破綻するでしょう。需給バランスの一時的な不均衡はありますが、長い目で見れば均衡が保たれるよう力学が働き、需要か供給の何れかが崩れます。
性をサービスの対象とする職業は多く、バリエーションも豊富です。それが本業であるか副業であるかは置いておき、愛人でいることでお金を稼ぐ人もいます。バブル期には「妾」「二号」と揶揄されたことがあるそうですが、この類のサービスは21世紀の現代でも「愛人」という呼び名で生き続けています。
予め断っておきますが、愛人サービスの善悪や道徳性を論じるつもりは一切ありません。あくまでも経済的な観点から話を展開します。
バブル期と言えば、今からさかのぼること30年から40年前のことです。愛人サービスの起源はというと、それ以上にかなり古い歴史があります。それほど前のサービスが残っているということは、サービス受給者に評価され続けてきたロングセラーのサービスと言えます。ただし、需要と供給のバランスは今と昔では大きく変わってきています。私はバブル期の景気を肌で感じたわけではありませんが、当時は愛人を囲うことが男性のある種のステータスでもあったと聞きます。需要が高く供給が追い付いていない状態だったわけで、サービス価格もインフレを起こしていました。
先ほど、愛人サービスの需給バランスが変わったと書きましたが、客単価はバブル期当時と比べて下がっています。詳しい統計情報や要因分析は専門誌に譲るとして、私の手元の資料では、愛人女性が男性1人から受け取る対価はバブル期には月平均50万円だったのが、今では月平均5万円にまで下がっています。なんとサービス価値が10分の1になるというデフレ状況なのです。
このように、需要と供給のバランスは絶えず変化していて、いずれかが下がればもう一方も下がる(その逆も然り)という力学だけが働きます。希少性の高いサービスは自ずと高額で取引されますが、競争相手が増えてサービスがコモディティ化したり、或いはサービスが手軽に安価で入手できるように生産性が向上するとデフレになることがあります。デフレの要因が、コモディティ化にあるのか生産性の向上にあるのか、あるいはその両方なのかは別途分析が必要です。
独立採算型の企業としてフランチャイズビジネスを展開する会社と仕事をする機会があります。フランチャイジー(加盟店)は規模の経済を活かしてより安価にサービスを提供できるようになるので、一定の生産性向上が見込めます。しかしながら、フランチャイザー(運営本部)に頼りきりでは、自社オリジナルサービスの競争力は向上しません。本部にロイヤリティを払うことでマーケティングやR&Dを外注していると捉えることも出来ますが、市場変化に伴って本部共々討ち死にするリスクもあります。
さて、愛人サービスのようなデフレ状況にある商品の場合、個人オリジナルの力で勝負するのではなくクラブなどの店舗に所属することで自分自身をフランチャイジー化し、マーケティングやR&Dを外注するのも一計でしょう。しかし、先述のように市場変化に伴った共倒れのリスクや、必ずしもタイプの顧客が来店するわけでもなければ希望通りの美容武装ができるとも限らないというリスクもあります。以上のように、外注するとどうしてもコントロール不可能な要素が増えてしまうのです。
自社のコントロール下でデフレの価格競争から抜け出すためには、自社オリジナルの競争力をつける必要があります。自前でR&Dを行ないサービスを研いて高付加価値を生み出すしかありません。価格据え置きでサービス内容を充実させるか、サービス内容を変えずに価格を下げるか、いずれかを選ぶ必要があります。
市場がデフレ状態にある時は自社のサービス内容を再考する絶好の機会だと思います。デフレに合わせてサービス内容を縮小するのはどこの会社でも出来ることで、それでは競争力は向上しませんし、薄利が続けば経営が立ちいかなくなる恐れもあります。安易に値引きするのではなく、他社では替えが利かないサービスを提供できるようになれば、競争とは無縁の状況で戦えます。従って、単に美容武装だけではなく、例えば競合が持っていない教養を身につけたり礼儀やマナーをわきまえるといった容易には替えの利かない高付加価値をつけることが、競争からの脱出に繋がるのです。
デフレ下の勝ち残りに向けては自社オリジナルの付加価値を開発することが重要で、経営者にはその責任があります。普段何気なくボーっと過ごしている時間があれば、偶然手に取った雑誌からでも課題解決のヒントを得られることがあるのです。例え愛人サービスのような全くの異業種であっても、自社に置き換えて分析することで、突破口が見えてくる場合もあります。ロングセラーのサービスには特にそのヒントが詰まっているように思います。
参考文献:副業愛人