債務超過からの脱出 ~変動費カットによる営業利益率の改善~

  • 事例紹介

①業種・本社所在地
②結果
③内容

①建設業・熊本県
②平均営業利益率2.4%から9.2%に改善し債務超過を脱出
③熊本県に本社を構えるA社との出会いは、2021年8月でした。その時期は会計年度末(10月決算)まであと2ヶ月という、進行期の決算がほぼ確定する時期でした。建設業界は通常、工事完成基準を採用しているため、決算月までの2ヶ月間で売上を増やせる余地はほぼありません。ただ、修繕工事のような工期が短いプロジェクトもありますが、その受注高は限られます。多くの会社は決算月の6ヶ月~8ヶ月ほど前から、次期の売上を見越した営業活動を行います。

A社は新設と修繕がそれぞれ半分ずつほどの水準で売上高を構成しています。会社の過去の決算書類を閲覧したところ、売上高は増収傾向にあり、売上総利益率も23%~28%とまずまずの数字が出ていました。ただし、創業から4期目の若い会社なので、確認できる決算は3期分に過ぎませんでした。

問題は、営業利益が悪化傾向にあったことです。平均で2.4%という数値で、直近期においては1%を割っており、経営はギリギリの状態でした。また、進行中の期の決算状況はさらに悪く、2ヶ月後には赤字に陥ることが確実でした。さらに繰越利益を食いつぶして自己資本比率がマイナス、つまり債務超過の状態にまで陥ることが読めていました。そして、会社の生命線であるキャッシュフローも悪化しており、流動比率も安全な水準を下回っていました。要するに、会社は危険な状態にありました。

しかし、改善するための具体的な手段ははっきりしていましたし、特に難しいことが必要なわけではありませんでした。主な課題は販管費の削減で、特に従業員一人あたりのコストが一般的な水準の2倍に達していたため、この無駄な経費を削減することが必要でした。ただし、すべての販管費を無差別に削るべきではありません。必要経費と無駄な経費を見極めることが重要です。必要経費を削ってしまうと、場合によっては売上を上げることが難しくなり、経済的に更に苦境に陥ることにも繋がります。

費用を削減する際、効果が早く現れる固定費から切り始めることが多いですが、A社の場合、少なくとも直近3期は売上が増加していたので、損益分岐点を下げる方向で変動費を削減しました。その結果、変動費を中心に約1,000万円をカットすることができました。固定費についても、厳しい判断を必要としましたが、A社長の給与の見直しも行いました。売上総利益率はほぼ変わらなかったものの、経費のスリム化により営業利益が増加しました。これにより、債務超過状態から脱出し、次の期には営業利益率が9.2%に改善しました。

今回のコストカットは、第一フェーズとしての応急処置でした。次のステップとして、同じ資本でも以前よりも高い売上(総資本回転率)を上げるための体質改善、つまり第二フェーズへ移行します。そのためには、DX推進が欠かせません。単純な作業はすべて自動化し、より効率的な運営を目指します。