YouTube動画の平均再生率とカット割りの関係

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「平均再生率」とは、動画の全長のうち何%が平均的に視聴されているかを示す指標です。自ずと、平均再生率が高ければ、それはユーザーにとって価値あるコンテンツとみなされます。優秀な動画と評価される目安は、平均再生率が40%以上であるとされており、その場合、YouTubeのアルゴリズム上でおすすめや関連動画に表示される回数が増えると言われています。

ある建築会社のルームツアー動画を例に取り上げてみましょう。初めは、どのようにして平均再生率40%以上という指標をクリアすべきか、また、何が価値あるコンテンツなのかを定義することが難しく思えました。しかし、YouTube studioのアナリティクスを調べていく中で、カット割りと視聴者維持率の曲線との関係性に気付いたのです。
図1、図2は、それぞれルームツアー動画のアナリティクスデータを加工したものです。

動画時間2分8秒
カット数25場面
平均カット時間4.9秒
平均再生率55.82%

動画時間57秒
カット数19場面
平均カット時間3秒
平均再生率59.14%

どちらの動画も平均再生率が50%以上と高く、優秀なコンテンツと位置付けられます。これらの動画の内容は、視聴者の興味を引きつけるものとなっています。しかしながら、私が注目したのは、その内容よりも、カット割りの時間という客観的な要素です。赤丸の位置は、カット(場面)が変わるタイミングを示しています。カットとカットの間隔が広い部分では、視聴者の離脱率が高いように見受けられます。特に、動画の始まりと終わり(青色区間)では、カット割りの間隔が広く、再生率が下がっていることが分かります。一方で、カット割りが密集している部分(赤色区間)では、再生率の低下はあまり見られません。また、青色の両端部分は、赤色の区間よりもカットの間隔が短いことが確認できます。

これらから、カット割りの時間の長さと視聴者の離脱率との間に相関があると考えられます。次に示す図3のグラフと比較すると、この点がより明確になります。

動画時間11分44秒
カット数35場面
平均カット時間19.8秒
平均再生数24.9%

図3では、赤丸が見づらいためあえて表示していませんが、平均カット時間が20秒近くまで伸び、平均再生率は25%にも満たない結果となっています。近年、TikTokなどに代表されるショート動画の消費が増えています。YouTube内でも、ショート動画のコンテンツが増えてきました。10分以上の長いコンテンツで再生率を維持するには、非常に興味深い内容でなければ難しいでしょう。それよりも、カット割りの時間という、誰でもすぐに注意を払うことができる要素に焦点を当てたほうが、付加価値の高い動画を作成できるでしょう。

ちなみに、私がアナリティクスを詳しく見ていないため確定的には言えませんが、超有名ユーチューバーのHIKAKINさんのある動画では平均カット時間が4.6秒、映画「モンスターズユニバーシティ」予告編では平均カット時間がなんと0.8秒でした。どちらの動画も再生回数が驚異の100万回を超えており、平均再生率だけでなく間接的には再生回数にも何らかの関連性があるのではないかと考えています。