80歳の自分に申し訳ないと思わないように
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ご存じのように、イエローハット創業者である鍵山氏は、一代で東証一部上場企業を作り上げました。優れた経営手腕で会社の時価総額を上げたというだけでなく、高いレベルの人間性も持ち合わせた名経営者です。多くの人が、程度の差はあれど「やっておけば良かった」という後悔を抱えるものです。しかし、「やっておいて良かった」と振り返れる人はそれほど多くありません。人間には、「やってしまった後悔」は実はほとんどなく、「やらずに後悔する」のが一般的です。80歳の自分に対して申し訳なくないように、やるべきことは今のうちにやっておくべきです。
凡事は誰にでもできることですが、それを継続することは難しいものです。自分に課したルールを徹底して継続できるところに、鍵山氏の凄さがあります。鍵山氏の言葉に、こんなものがあります。
“10年続くと偉大なり、20年続くと畏るべし、30年続くと歴史になる”
凡事でも徹底すると非凡になる、という意味です。
努力だけで数十年単位の継続を成し遂げるのは、ほぼ不可能でしょう。人間の心は弱いため、長期間の努力を続けることは普通ではありません。もし本人に「努力している」という感覚があると、必ず挫折します。新しいことを始めるとき、やり始めの段階では多少の努力が必要ですが、やり続けるうちに「勝手に続いてしまう」状態が理想です。継続が進むと、それが習慣化され、やらないと気持ち悪いと感じるほどになります。そうなると、努力ではなく自然と続けられるようになるのです。
「続けなければいけない」と意気込んでいる段階では、まだ習慣化できていません。習慣は一朝一夕で身につくものではありません。昨日よりほんの少しだけ努力を積み重ねることで、やがて習慣になります。そのためには、努力の結果を可視化し、「明日もまたやろう」と思える環境を整えることが重要です。人の気力には限界があることをまず理解しましょう。そして、「やらなければいけない」もしくは「すぐにやれる」環境を作り出す必要があります。「どうすれば続けられるか」ではなく、「どうすれば仕組化できるか」を考えることが継続のコツです。
環境整備に加え、どうしても自分を奮い立たせたいときには、本を読むことも一つの方法です。私自身も、本に助けられたことが何度もあります。例えば、伝記には成功者の苦労話が多く含まれています。偉人ですら苦労していたと知ると、「私ごときが何をクヨクヨしているのか」と思い直し、奮起するきっかけになります。偉大な人から直接有難い言葉をもらう必要はありません。些細なことがきっかけになることもあります。例えば、たまたま立ち寄った書店で手に取った一冊の本、その中のたまたま開いたページに書かれていた言葉が、人生を変えることもあるのです。
ところで、私が本の面白さを初めて知ったのは、学生時代に友達からメールで送られてきた携帯小説がきっかけでした。その小説に特別な興味があったわけではありませんが、読み始めると、主人公の境遇が自分自身に近く、感情移入して一気に読み切りました。活字の物語がこれほど面白いとは思わず、本の楽しさを初めて実感した瞬間でした。それ以来、少しずつ本を読む機会が増えていきました。努力して読書を続けているわけではありません。感動や新たな気づきにつながる面白さがあるからこそ、自然と続いているのです。
カバンには常に読みかけの本を2冊入れておき、隙間時間に読むようにしています。外出中に1冊を読み終えても、すぐに2冊目に取り掛かれるようにしているのです。これも環境整備の一環です。あの小説を教えてくれた友達には感謝しかありません。80歳になった自分が「やっておいて良かった」と振り返ることを、これからも続けていきたいものです。

参考文献:やっておいてよかった