3つの資本へのバランス投資によるゲーム攻略法
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どのような競争においても、そのゲームのルールを理解することなくして勝つことはできないでしょう。我々は資本主義市場というフィールドで競争しています。そのゲームには明確なルールがあるのです。当然ながら、ルールを熟知している方が勝つ確率は高いのは言うまでもありません。極めてドライなことを申し上げると、結婚とは資本主義市場というフィールドにおいて、一種の金融商品にあたります。今回は、ゲームを優位に進めるアイテムの1つである、結婚という金融商品について考えてみます。
なお、どういう生き方が正しいとか間違っているとかいう話をするつもりは一切ありません。道徳的な善悪も抜きにして話を進めます。
資本主義市場と言うからには、まずその資本というものについて定義しておきます。資本には大きく3つの柱があります。この3つを上手くバランスさせることでリスクヘッジし、割と無難にゲームを展開していくことができます。3つとは、「人的資本」、「金融資本」、「社会資本」のことです。この3つの資本が人生を支えてくれる柱です。押さえておきたいゲーム攻略法は、資本主義市場ではできるだけリスクを分散することが定石であるということです。3つの資本に対し、バランスよく投資しておくことでゲームを優位に進められる可能性が高まります。
人的資本とは人が働いてお金を稼ぐ力のことです。結婚を機に仕事を辞め、専業主婦(主夫)に転身したとします。専業主婦(主夫)になることは、3つをバランスさせるどころか、資本の柱の1つである人的資本を捨ててしまうことになります。バランスが大事なゲームにおいて、意図的に柱の1つを捨ててしまうと普通の人にとってはかなり不利な状況になります。よほど戦略的に計算された意思決定でなければ、後のゲーム展開が大きく狂ってしまうでしょう。なぜなら、結婚して仕事を辞め、専業主婦(主夫)として家庭に入った場合、人的資本が生み出すはずだった資本は金額にして約2億円にもなり、その大金を失うことになるからです。普通の人にとっては大ダメージです。
資本主義市場という、弱肉強食で困難がつきもののゲームで柱の1つを失いバランスを欠いた状態でいるということは、強いモンスターの潜むダンジョンに非武装で突入するようなものです。
柱を1つ欠いた状態というのは、資産形成において不利であることに加え、ゲームオーバーのリスクも高まった危険な状態でもあります。どういうことかと言うと、結婚とは金融商品のことであり、結婚行為そのものが金融資本を形成するための手段でもあるのです。そこで、専業主婦(主夫)という人的資本を失った状態で離婚すると、配偶者から得られる金融資本までも失ってしまいます。本来なら、結婚している状態が続く限り配偶者が人的資本を使ってお金を稼いできてくれます。株や不動産への投資からリターンを生むことと同様の状態だったのが、離婚によってその金融資本も失うことになります。婚費からリターンを得ることもできますが、それは配偶者次第です。「結婚=金融商品」の説明は、以前に「結婚の経済的側面を考慮する」で書いたので、そちらも参考にしてもらいたいと思います。
3つの柱の最後に残るのは社会資本です。社会資本とは、ジモティーやママ(パパ)友の関係にある友情や愛情のことで、いわゆる人間関係による資産です。専業主婦(主夫)になる時点で人的資本を捨てているので、ダブルインカムの世帯と比べると、結婚生活をスタートさせた時点で資本形成においてもビハインドを負った状態にあります。当然、資産形成の進捗も後れを取るでしょう。ダブルインカム世帯と比べる劣等感は、もしかしたら、社会資本の質をも低下させるかもしれません。
これでお分かりいただけたでしょう。専業主婦(主夫)の状態で夫婦仲が悪くなって離婚問題にでも発展すると悲惨で、人生を支える3つの柱のうち2つの資本(人的資本と金融資本)を失うことになります。残る社会資本についても、劣等感から大きなリターンを見込めるほどの投資はできないかもしれません。劣等感なく付き合えるジモティーやママ(パパ)友等との縁を大切にしながら、もう一度働き始めることで人的資本を動かすしかありません。しかし、優れたスペシャリストでもない限り、年齢的足枷もあり人的資本を再稼働させるための働き口も限られたものになります。最悪の場合は、再起できずゲームオーバー(実家の両親を頼る)になるリスクもあります。
資本形成について、結婚という金融商品を買った後、できるだけ早いタイミングで夫婦間でしっかり考えた方が良いでしょう。そうしなければリスクヘッジが後手に回りますし、最悪の場合はゲームオーバーです。一発逆転があるとすれば、運よく「儲かる離婚」側にまわって婚費を取るという方法くらいでしょうか。しかし、婚費を狙う計算までしている強かな人であれば、そもそも専業主婦(主夫)として人的資本を捨てるという選択をしないかもしれません。もし、専業主婦(主夫)になった後で、残り2つの資本の脆弱さに気づいたのなら、金融資本への投資としてせっせと配偶者をおだてて出世させるか、自らの人的資本を再度稼働させるのが賢明でしょう。これは専業主婦(主夫)を選択した人だけの問題ではなく、専業主婦(主夫)を選択させた配偶者側にも責任の一端はあると思います。資本形成については夫婦でしっかり考えなければならないということです。資本主義市場というゲームは、投資した利回りで資本を増やせますが暴落する恐れもあります。なのでリスクヘッジが必要なのです。
賢く生きていくためには、最低限ゲームのルールを理解しておくべきです。スポーツの世界と同じで、ルールを知らずしてゲームは楽しめないし、ましてやプレイヤーとして勝つことはできないのです。
参考文献:2億円と専業主婦