間違った問題を必死に解いていないか?
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営業職を経験した人なら誰しも一度は考えたことがあるはずです。「どうやったらもっと売れるのか?」と。この問いに答えるため、多くの人がトーク力を鍛えようと必死になります。しかし、その打ち手は本当に今の自分にとって最適なのか、そこが本質です。
会社の先輩に営業面談へ同行させてもらい、商談を録音し、夜な夜な聞き直して自分の頭に刷り込んでいく。こうした努力は確かに意味のあることです。人によっては「そこまでやるのか」と思うかもしれませんが、逆にきちんとやっている人からすれば、「そんなことすらやっていないのに売れるようになろうと考えること自体が甘い」と感じるでしょう。しかし、売れるトークをそのままコピーすることが解決策になるとは限りません。本質を見失ってはならないのです。
もし、あなたが思うように営業の成果を上げられていないとしたら、その要因を「トーク力の不足」だと結論付けるのは早計です。他に考えられる要因はないか、もう少し深く振り返ってみるべきでしょう。確かに、トーク力があるに越したことはありません。洗練されたトークは歩留まり(契約率)を上げる要素の一つです。しかし、それだけではありません。そもそも成約件数とは、営業面談数と歩留まりの積によって決まります。
この関係を数式で表せば、次のようになります。
成約数 = 営業面談数 × 歩留まり
つまり、営業トークを磨くことは、あくまでも「歩留まり」を改善するための手段の一つであり、それだけでは成約数を伸ばすことはできません。どれだけ歩留まりを高めようとしても、そもそも営業面談数が極端に少なければ、成約件数は上がりようがないのです。
もちろん、営業力を高める要素はこれだけではありません。営業力、すなわち成約件数を稼ぐ力には、観察力・判断力・行動力・説得力・忍耐力の5つの要素があるとされています。このうち、営業面談数を増やす力は「行動力」と「忍耐力」に当たり、歩留まりを上げる力は「観察力」「判断力」「説得力」の3つです。
まずは、自分の営業活動をつぶさに分析し、自分に何が足りていないのかを把握することが重要です。営業面談数は適正か? 部署内の同僚と比べて歩留まりはどうか? 当然ながら、課題がどこにあるかによって、取るべき戦略は異なります。
歩留まりは、トーク力をはじめとするテクニックによって向上させることができますが、そのテクニック自体は経験値に比例します。営業面談数を十分にこなしていないうちから、テクニックだけで成約率を上げようとするのは非現実的です。経験値の少ない人は、まず営業面談数を増やすことに注力すべきでしょう。その際に必要なのが「行動力」と「忍耐力」です。
一方で、ある程度の営業面談数を確保しているにもかかわらず、成約件数が伸び悩んでいる場合、原因は「歩留まりの低さ」にあります。このとき試されるのは、「観察力」「判断力」「説得力」です。
売れない営業マンを観察していると、「契約の見込みがない顧客をひたすら説得し続ける」という共通点が見えてきます。見込みのある顧客に当たれば、高い歩留まりで成約を勝ち取ることができるはずです。見込みがあるか否かは、商談中の顧客の反応を正しく観察できれば、おおよそ判断できます。また、そもそも見込みが低い顧客にはアポイントを取らないよう、事前の選別ができるようになることも重要です。
ここで、再び先の数式を振り返ってみましょう。
成約数 = 営業面談数 × 歩留まり
この両辺を「営業面談数」で割ると、
歩留まり = 成約数 ÷ 営業面談数
さらに、分子・分母に「見込み顧客数」を加えると、
歩留まり =(成約数 ÷ 見込み顧客数)×(見込み顧客数 ÷ 営業面談数)
ここで、右辺の「見込み顧客数 ÷ 営業面談数」に注目してください。
分母である営業面談数が、分子の見込み顧客数に近づけば近づくほど、歩留まりは向上します。つまり、営業面談数を増やしても、見込み顧客ではない相手にアプローチしている限り、成約率は上がらず、徒労に終わるのです。この確率が低すぎると、どれだけ行動力や忍耐力があっても、結果が伴わないため、精神的に折れてしまう可能性が高まります。
見込み顧客を成約に結びつける技術も重要ですが、そもそもアポイントを取る段階で「見込み顧客になり得るか」を慎重に見極めることこそ、営業成績を伸ばすための最大のポイントです。見込み客かどうかを判断するためには、アポイント取得前のリサーチを入念に行う必要があります。
営業経験のある方には、本質を見失うことなく、まずは自分自身の営業行動を徹底的に分析することをお勧めします。トーク力だけですべてをカバーしようとする姿勢が、そもそもの間違いなのです。

参考文献:トークいらずの営業術