遺伝子と人生戦略

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我々の行動は、遺伝子によってその大枠が決定されます。進化論的な観点から見れば、勝利は、お金を如何に多く稼いだかではなく子孫の数で測られます。子孫の数を最大化するように、世代ごとに遺伝子が更新されていきます。進化論的な勝利が遺伝子の数だとして、では自分自身にとっての勝利は何なのかを考えてみましょう。その勝利を手にするための行動も遺伝子に残されています。

日常に目を向けてみると、勝利(何を勝利とするかは個々人により異なります)のために最善の行動をどう選ぶかが重要となります。手っ取り早いのは、自分と近い属性の遺伝子(境遇などが近い人)を持つ勝利者の行動をすべて徹底的にコピーしてしまうことです。なぜなら、自分と似ているその属性の遺伝子は、そのような行動によってすでに勝利を達成しているのですから。

さて、冒頭に書いたスケールの大きな話になりますが、すべての生物は遺伝子によって動かされています。子孫の行動は先祖の遺伝子によって指示されているということです。ただ、遺伝子による情報伝達は世代を超えて行われるため、その伝達速度は非常に遅いものです。我々人間であれば、子どもが生まれてから、その子どもが次の子どもを産むまでの間に、30年のスパンがあると仮定します。この場合、次の世代に情報を伝達するまでに30年もかかることになります。
日常生活では、五感によって得られる情報を遺伝子で処理するにはあまりにも遅すぎるため、大脳や神経が情報処理に活用されます。
遺伝子は、前の世代から次の世代への情報伝達の役を担い、人間をはじめ他のすべての生物にとって「種」としての運命を決定するほど大きな影響力を持っています。

人間では、子ども産むまでの30年という期間で蓄積した、質の高い情報を多く次の世代に伝達できれば、予め情報武装した状態で次の世代の人生をスタートできるので、生存に有利です。しかし、伝達される情報量が少なすぎたり、質が悪すぎたりすると、種としての生存は危機に瀕してしまいます。他の生物に淘汰される可能性が高く、種としての存続は絶望的になる恐れもあります。

遺伝子としては、種の存続を脅かすすべての危険に対策を練っておく必要があるわけです。可能な限りのプログラミングを事前に行なっておかなければなりません。
例えば、火星との通信を考えてみます。地球から火星までの無線通信には約4分かかるため、対話よりも手紙のような一方的なコミュニケーションが必然となります。これが30年スパンだとどうでしょうか。事前に詳細なプログラミングが必要だと分かります。

遺伝子が影響する力は大きいと分かったところで、話を戻しましょう。仕事に限らず、人間関係など困ったときにこの考えを思い出せば、問題を解決する手がかりを見つけることができるかもしれません。自分と近い遺伝子を持つ先人は、どのようにしてその問題を乗り越えたのかという視点から、勝利のヒントを得てもらえればと思います。

参考文献:利己的な遺伝子