計算高い人間関係

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男女の関係に限らず、人間関係の9割が打算と言っても過言ではありません。以前『遺伝子と人生戦略』でも触れましたが、程度の差はあれ生き物は利己的にふるまうよう遺伝子にインプットされています。自分は損得勘定抜きに人と接していると胸を張っている人でも、本人は気づかない遺伝子レベルでは打算なのです。確かに、打算ではない人間関係もありますが、綺麗ごとを抜きにすればタイトルの通り割合ではほぼ打算です。恋愛、商談、師弟など、各々の人間関係では相手の振る舞いについて実はみんな多少なりとも打算的なものです。その打算を前面に出してしまうといやらしく興醒めですが、例え1%でも相手の利益になるように、例え1%でも相手のためなるように、と考えての振る舞いが相手に伝われば、薄っぺらい打算さも面白いように機能します。皆、薄々打算があることは実は分かっています。それを承知の上で、それが出過ぎないよう良い塩梅に調整が必要なだけなのです。

営業力強化の支援の仕事の際によく遭遇することがあります。支援先のクライアント企業の営業担当者の中には、お客様に対して打算の気持ちを正直に、ストレートに、そして無邪気に伝える人もいます。普通なら打算さが見えると興醒めですが、担当者のキャラによっては展開が良い方に転ぶ場合もあります。打算さを隠し通せない、ちょっとした不器用さが愛嬌になり、見え見えの(というか見せる)打算がかえって人の心を打つというシーンを何度か目にしました。打算を隠さないその正直さが、逆に打算がないように映るのかもしれません。

さて、その打算ですが、やはり思い通りに事が運ぶと嬉しいものです。では打算のヒット率を上げるにはどうすべきなのでしょうか。答えは単純で、緻密に打算の計画を練るしかない、の一言に尽きます。計画を練って実行に移し、結果を分析して改善していくというPDCAサイクルを回すことが打算のヒット率を向上させる最強のツールだと考えています。せっかくの打算です。どうせやるなら上手くやりたいものです。何も考えない運任せではもはや打算とは言えません。再現性もなく、改善は見込めません。また運任せということは、周囲の環境変化にただ反応している動物の振る舞いに過ぎず、頭を使っていないのも同然です。地球上で他の動物を差し置いて人間が圧倒的に優位に立てているのは頭脳なので、この頭脳を活かすことが最良の策でしょう。

先の営業支援現場での話の続きですが、愛嬌があって憎めない人ではあるものの、良い展開に落ち着くことばかりではなく、商談も佳境に入ったクロージング前の大事な局面で、お客様をその気にさせられないこともあります。愛嬌だけで乗り切ってきた人は、上手くいかなかったとき、なぜ上手くいかなかったのかが分からないので、改善して次のステージに進むことができません。打算と愛嬌は使い分けで、商談が佳境に入る前の前半戦では練りに練った打算の理屈で最適な判断をしてもらい、最後の意思決定では愛嬌や人間性などの理屈ではない所謂情が物を言います。場面や状況に応じて使い分けることで打算は活きてきます。
また、打算について良いように捉えない人もいるかもしれません。先にも述べた通り確かに計算高さが前面に出ている人は何となく近寄りがたいものです。しかし、はなから色眼鏡で見て決めつけるのは思考停止しているからです。打算がいけないのではなく、打算だと思わせることがいけないのだと視点を変えてみてはどうでしょうか。

参考文献:男と女は打算が9割