行き着く先は、やっぱり気配り。

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東京・銀座といえば、高級店が立ち並ぶ街という印象が強いですよね。日常的にそういったお店で飲食できる人は限られています。銀座に通うには、一定以上の収入だけでなく、心理的にも時間的にも余裕が必要です。いわゆる一流と呼ばれる人たちとは、そういう層を指すのでしょう。では、その一流とは一体どんな人たちなのか。その立ち居振る舞いから、少し帰納的に導き出してみたいと思います。なぜなら、一流を目指すなら一流の真似をするのが一番手っ取り早いと考えるからです。

以前書いた「誰から学ぶかで、結果は変わる」でも触れましたが、重要なのは結果ではなくプロセスを真似ることです。一流と呼ばれる人たちの日常の過ごし方――まさにプロセスの部分――を観察することが、自分を高める最初の一歩になります。自己啓発書などを読み比べると共通して出てくるのは、「相手の心を察する力」です。表面上だけ取り繕うのではなく、相手の深い心理を洞察し、さりげなく気を配れる。これが一流の人に共通する資質の一つだと感じます。どうすればそうした思考ができるのでしょうか。答えはシンプルで、本人になったつもりで真似をすることです。

仮説を持って行動してみることで、気づきの「質」と「量」は格段に上がります。特別に難しいことをする必要はありません。日々の小さなことの積み重ね――それが一流に近づく道だと思います。相手の気持ちに立てるのは、普段から自分ならどうするかという視点で物事を考えているからです。この心構えの積み重ねが、高み至る近道だと思います。

さらに成長を加速させるには、今の自分よりもワンランク上の行動を起こし、失敗を経験してみることです。脳の仕組み上、人は成功からよりも、失敗から学ぶようにできているようです。一段階上の仕事や遊びに挑戦してみて、うまくいかなかったら、なぜ失敗したのか仮説を立て何度でもトライしてみましょう。ときには叱られることもあるかもしれません。ですが、その過程で生まれる感情の揺れが、人間としての深みを生み出すのだと思います。失敗の中で味わった感情が、深みのある人間へと成長させてくれるはずです。人の痛みが分かるようになる――それが本当の意味での一流なのかもしれません。

少し話を変えます。誰だって、自分がかわいいに決まっています。以前書いた「遺伝子と人生戦略」でも触れましたが、地球上の生物は基本的には利己的に行動するようにできています。従って、他者の本能的な部分を察して気を配れる人は、それだけで人間関係がスムーズになります。男性にも女性にも共感を得やすくなり、「この人は分かってくれてるな」と思われるようになるわけです。そして、そう感じた相手には自然と尊敬の念を抱くものです。心理学では「返報性の法則」と呼ばれますが、相手を認めることで自分も認められる――この構造は、銀座の高級店でも、職場の会議室でも、まったく同じです。

一流とは、特別な人種のことではなく、「自分以外の誰かに、どれだけ心を配れるか」という姿勢そのものなのだと思います。高級クラブのママも、老舗の板前も、成功した経営者も、その根底にあるのは人を察する力ではないかと。小さな気づきと小さな挑戦の積み重ねが、気づけば一流の側に立たせてくれるはずです。