自分の経営、他人任せになっていませんか?

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世界では、日々とんでもない数の出来事が起こっています。その中には自分の生活とまったく関係のないものもあれば、思いのほか身近なリスクを含んでいるものもあります。リスク管理を行うには、まず先を読む力が欠かせません。もちろん、見方を変えればリスクはチャンスにもなり得ます。問題は、目先の損得しか見えないまま、場当たり的に反応してしまうことです。そうなると、学習も再現性もなく、「運が良ければ助かった、悪ければドツボ」という不安定な勝負を繰り返すだけになります。同じ出来事に直面したときに、また場当たり的な判断を下してしまうでしょう。その姿は、エサを追うネズミ、ネズミを追うネコ、ネコを追うイヌと大差ありません。

局地戦で一時的に負けることはあっても、戦い全体を通して勝つことが大事です。短期的な損得よりも、最終的な目的地を定め、その達成に向けて環境をどう利用するかです。自分というひとつの会社を経営するつもりで、上手に舵を切った方が面白くなるはずです。そうです。どんな物語でも主人公は自分自身です。

ある企業で、新しい事業の立ち上げに携わったことがあります。その業態は、これまでの業界には存在しなかった常識外れの概念でした。当然、社内では賛否両論出てくるわけです。日の目を見ない可能性もありました。しかし、やってみなければ分かりません。何よりまず「目標をどこに設定するか」が肝でした。この変化の激しい時代、10年先を読むのはもはや占いの領域です。正直、3年後ですら怪しいものです。でも、分からないからといって適当でいい理由にはなりません。だからこそ、できる限りの情報を集め、せめて「3年後にどうなっていたいか」を明確にする必要があります。目標を定めれば、自ずと次の問いが生まれます。「では、1年後、半年後にどんな状態でなければならないのか?」そうやって逆算していくと、必要な情報や行動が見えてきます。

集めた情報を分析し、目標達成の妨げになりそうなハードルを予測していきます。そのうえで、ハードルを乗り越えるため策を事前に手を打っておきます。たったこれだけで、目標達成率はぐっと上がります。そして重要なのは、打ち手を考えたらすぐに実行すること。寝かせておいても熟成はしません。むしろ腐ります。考えすぎて動きが鈍るうちに、世の中の変化のスピードに置き去りにされてしまうからです。最悪の場合、事業どころか会社、いや業界ごと消滅するかもしれません。今や、同じ業界の会社だけが競合とは限りません。全く別の分野から突如現れて市場をさらうケースも珍しくありません。もはや敵は業界の外にいる時代です。

先ほどの新規事業も、もともとは保守的で変化の少ない業界に一石を投じる挑戦でした。一見、関係なさそうに見える出来事でも、一歩引いて俯瞰すれば、そこには機会と脅威のヒントが隠れていることがあります。その両方を見極めながら、最適な打ち手を講じていく。それが、戦略的に生きるということだと思います。
変化の激しい時代だからこそ、「流されず、読み、仕掛ける」。リスクもチャンスも紙一重です。いかに早く読み、いかに速く打ち、いかに柔軟に修正できるか。この3つを回せる人こそ、経営を黒字化できる経営者なのだと思います。