合理性から感情へ
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言わずと知れた、リチャード・セイラー氏は、2017年にノーベル経済学賞を受賞した経済界の超大物です。従来の経済学理論の多くは、人間を合理的な生き物(エコン)と仮定していました。しかし、人間は常にエコンとして行動するわけではなく、どちらかと言うと気まぐれで感情的なヒューマンとして振る舞うことの方が多いのではないでしょうか。人間の行動は、その時々の感情に大きく影響を受けるのです。
当然と言えば当然ですが、ビジネスにおいて戦略を組み立てる際には、この当たり前がしばしば無視され、行動が合理的かどうかだけで判断されてしまいます。それが理由で、期待通りの成果が得られないこともあるのです。だからこそ、戦略を考える上で、人間の心理に注目するべきです。
例えば、同じ商品でも、それがどこで売られているかによって消費者の満足度(印象)は変わります。
夏の暑い日、ビーチで日光浴をしていて、冷えたアサヒビールが飲みたくなったとしましょう。同じアサヒビールでも、高級ホテルのラウンジで400円出して買ったものと、今にも潰れそうな個人商店のボロ屋で400円で買ったものとでは、値段と商品が同じでも感じる満足度は異なるでしょう。もちろん、前者の方が美味しく価値があると感じるでしょう。ちなみに、コンビニでの購入価格は2023年8月現在で税込230円前後です。
同じサービスを受けても、提供する側から受ける印象によって、割高と感じるか割安と感じるかが分かれます。
さて、消費者側の視点に立ってみましょう。価格には理由があり、その価格がどうしてそうなったのか考えることがあります。私はスターバックスが好きでよく利用します。出されるコーヒーに使われている豆の原価は、どのコーヒーチェーン店とも大差ないはずです。しかし、スターバックスのコーヒーがやや高いのは、スタッフの研修費や店舗の立地などが考慮され、優雅な時間と場所を提供するためのサービス費がコーヒー代に反映されているからです。私はそのことを分かった上で、サービスに満足して対価を支払っています。これを理解することで、より賢いお金の使い方ができると思います。
サービス提供者は、まず消費者の満足度(印象)を優先し、そのサービスのどの部分によって満足してもらいたいのかを考えることが大切です。
私たちは単なるヒューマンであり、理性的なエコンも存在しますが、それはむしろ少数派です。この事実を理解し、それを商売繁盛や人間関係の構築に生かしてもらえればと思います。
参考文献:行動経済学の逆襲