出生ガチャに左右されない資産形成
- 記事
今回は自己資本と他人資本、それから資産についての話です。企業が開示している決算報告書の貸借対照表に記載されているものと言った方がイメージしやすいでしょうか。
『21世紀の資本』という本があります。言わずと知れた名著です。しかし、700ページを超える大作であるため、読了するには相当の努力が必要となり、手を付けていない人も少なくないと思います。しかし、最近では漫画版の書籍も出ており、より読みやすくなっています。読みにくそうな本であればまずは漫画で理解を深めるというのも一つの手段です。
先に大事な結論を述べておきます。 それは、人間が身体を使って幾ら一生懸命に働いても裕福になれない可能性が高いということです。理由は、資本収益率(r)が経済成長率(g)を上回るという不等式「r > g」が証明されたからです。この式が意味するのは、貧富の格差が拡大し続け、富裕層はさらに富を増やし、貧困層との差は広がる一方であるということです。
相続によって多くの資本(資産)を持って生まれた富裕層は、その資本を賢く運用することで、資産を雪だるま式に増やすことができます。これが資本収益率の意味するところです。一方、経済成長率は大まかには労働に対する報酬を指します。
これは紛れもない事実であり、資本主義社会で生活する限り、この前提条件は変えられないでしょう。自分自身の身体が唯一の資産生成装置である場合、資産を持っている人よりも厳しい状況に直面することになります。もちろん身体も資本の一つであることは間違いないのですが、この資本(身体=g)から生み出される資産は、身体以外の資本(資産そのもの=r)が生み出す資産に比べると低くなります。つまり、身体をどれだけ使って一生懸命に仕事をして稼いだとしても、資産運用の上手い富裕層との貧富の差は拡大し続けることになります。
従って、相対的に裕福になるためには自身の身体以外の資本(お金、書籍、ブログ、動画、不動産など)をどう活用するかが重要になります。これは『金持ち父さん貧乏父さん』でも同じことが指摘されています。
現在、自分の身体以外の資本がないと感じている人(多くの方が当てはまるでしょう)も、ただ嘆いていては何も始まりません。どんなことも現実からしかスタートできないので、まずはしっかり前を向いて現在の状況を分析し、生き残るための戦略を練ることが大切です。環境のせいにしても仕方がありません。泣いても笑っても結局は配られたカード、つまり出生ガチャで勝負しなければならないのです。
例えば会社員なら、もし単に勤めているというだけでは、資本は自らの身体一つだけということになります。しかし、社内でチームを持ったり、プロジェクトを任されたりすることで、それらを資本の一部として活用できるようになります。それには責任が伴いますが、平社員よりは仕事がしやすく、収益も上がりやすいでしょう。
また、今は平社員であっても、身体以外の資本を持つ方法は他にもたくさんあります。例として挙げた身体以外の資本(お金、書籍、ブログ、動画、不動産など)を利用するもよし。営業職の人なら自らアポイントを取り、商談先に訪問して契約を獲得するという自己資本をフルに使う以外に、顧客の紹介獲得など他人資本を利用できる仕組みを作れば、楽に仕事ができるでしょう。あるいは独立開業し法人という資本を持つのも一つの選択肢です。ただし、独立して組織を作る場合、従業員などの他人を動かすために、リーダーシップや相応の魅力や価値(自己資本力)が求められるので、それら高めておく必要がありますが。
一方で、お金や不動産を使えば文句も言わずに24時間365日働いてくれますが、結局それらの資産を得るにも、相続以外では自己資本力を高めて獲得できる産物です。
いずれにせよ、「r > g」という事実を変えることは現状では困難です。まずは、自己資本(g)の価値を高めつつ、徐々に増えていく資産(r)を活用していくのが王道です。この考えを基に、今一度先々を見据えた生き残り戦略を練り上げてみてはいかがでしょうか。ガチャのせいにして諦めた時点で試合終了です。
参考文献:21世紀の資本