再現性とデジタル活用のススメ

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自分の会社の営業組織に「勝ちパターン」はあるでしょうか?
つまり、このやり方を外さなければ、一定確率で成果が見込めるという再現性のあるモデルを持っているかどうか、ということです。これは何も会社に限った話ではなく、あなた自身の個人的な取り組みにも当てはまるでしょう。自分にとっての勝ちパターンを確立できているか──そう問われると、ちょっと答えに詰まる方も多いかもしれません。
たとえば営業の現場で言えば、案件ごとに顧客属性は当然ながら異なります。一人としてまったく同じ顧客などいない、それは分かりきっていることです。…が、だからといって100人の顧客に対して100通りの方法で、毎回ゼロからオーダーメイド対応をしていたらどうなるか。あなたやあなたの会社は、そのうち(割と早い段階で)工数倒れでゲームオーバーになりかねません。

抽象度の高い仕事を行なうには、数──つまりデータ量がものを言います。一見バラバラに見える個別案件でも、共通点を因数分解的に探ればパターンが見えてくることがあります。この考え方は、対外的な営業に限ったものではありません。社内の組織運営も同様です。いかなる状況下でもパターンを見出す力を鍛えておいて損はありません。むしろ、分析力がなければ先は明るくない──そんな時代です。

ご承知のとおり、デジタル化が叫ばれて久しい現代です。AIをはじめとしたテクノロジーを活用する場面は日常的に増えています。そんな中、あなた自身や自社にとっての勝ちパターン(モデル)を構築するうえで、デジタルの力を借りない手はありません。なぜなら、分析には何よりもデータが必要だからです。データは多ければ多いほど分析の精度が上がります。ただし、関係ないデータをかき集めるのは意味がありません。ノイズにしかなりませんし、膨大な無駄読みを強いられて目がチカチカします。
そして、膨大なデータを扱うなら、やはりデジタルが最も効率的です。まさか、紙に書いて手計算して…などという猛者はもういないとは思いますが(いませんよね?)、似たような非効率な運用は、現場で意外と起きているものです。

これだけ便利なツールが揃っている時代に、アクション結果やプロセスをデータ化しない──これはもう、戦場で鉄砲を撃つのではなく、投げてぶつけているレベルです。しかも空振り気味に。
私自身の経験からも、優秀な組織・人ほど分析力に優れていました。そしてその背景には、自社の状況がデータとして見える化されていることがあります。だからこそ、改善アクションのヒット率が高いのです。打率を上げるには、スイング数だけでなく、フォームの見直し=分析が不可欠ということです。
あらためて申し上げますが、分析すること自体が目的ではありません。目的は、優れた改善アクションを起こすことにあります。そのためにデータが必要なだけなのです。

優秀な会社組織は、経営者・事業部長がともにこの構造を理解しています。そう──繰り返しになりますが、デジタル化は分析のためにあり、分析は改善のためにあります。この一連の流れが正しく繋がっていなければ、デジタル化も分析もやってる風で終わってしまいます。
そして、改善は繰り返してこそ価値があります。再現性を構築し、精度を高め、成果を積み上げていく。それが勝ちパターンです。

なお、あるワンマン経営の会社では、目的と手段の区別がつかず、流行のツールを導入するたびに新施策を連発していました。そのたびに現場は疲弊し、結局何も定着せず…という悪循環に陥っていました。「うちはフルオーダーメイドがウリなんで」などと、パターン分析から逃げてはいけません。ビジネスの基本は再現性にあります。トップの思考が変わらなければ、組織はそれ以上に成長しません──という言葉は、あまりに真理すぎて、私も思わず背筋を伸ばしてしまいました。
だからこそ、目的を見据えたデジタル化から、自分だけの勝ちパターン構築を、ぜひ始めていただきたいのです。

参考文献:THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス