仮説検証と資源活用による付加価値最大化

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人は分からないことに対して不安を覚えるものです。この道はこのまま真っすぐ進んで大丈夫なのか、こんな時間に出て間に合うのか、これを買ったときに期待通りの効能が得られるのか、等々、分からないことに対しては大抵不安になります。分からないことを分かろうとすること、すなわち自分の思い通りに事を運ぶために最善を尽くすことは、皆当たり前にやっていることです。
可能な限り未来を予測して期待通りの効果が得られるように行動するものだと思います。しかし、未来のことを確実に予測するためにはタイムマシンにでも乗って未来を見てこない限り難しいでしょう。かと言って、未来のすべてが完璧に分かってしまうと、それはそれで味気ないものになってしまいます。お手軽に未来を見て(答えを探して)くるのではなく、分からないものを分かろうとするその過程が楽しく実りあるものになると思います。その過程は、誰にでもいつからでも始められます。現時点では未来を完璧に予測することはできませんが、情報収集とその緻密な分析から起こりうる未来を理想に近づけることはできます。ある程度起こりそうな未来を予想できれば、不安は減り、思い通りに事を運べる確率も上がります。

購入した商品について考えてみましょう。
期待を持って購入した商品を使って、期待通りの効果が得られたとします。その場合、費用対効果は100%イーブンです。
使い込んで溜まってきた得られた情報を分析し、こんな使い方はできないかと想像し、思わぬ効能が発見できれば、費用対効果は100%を超えるわけなので、十分に元を取ったと言えます。要するに、100%を超える期待以上の付加価値が付いたということです。
逆に、期待通りの効果が得られなかったり、あるいは使い方を誤って耐用年数を迎える前に壊れてしまったりすると、期待を下回ることになり、不満が募ってしまいます。費用対効果は100%を下回ります。さらに悪いことに、その不満に対して毒を吐き、自分の行動を省みることをしないかもしれません。その場合は、お金も時間も単に消費したことになりドブに捨てたも同然で、貴重な人生という時間を無駄にしたと言えます。費用対効果はマイナスと言えます。
付加価値を100%以上に最大化させるためには、購入した商品について深く理解し、それを使って何ができるかを想像し、新しい効能を見つけることが肝要です。

別の例を出します。
商品開発の目的で潜在顧客にインタビューに向かうとします。インタビューには仮説を持って臨まなければ得られるものはありません。何も考えられていない、満足度を測るだけのような通り一遍の質問内容では、新しい効果効能を付加するための開発にはつながらないでしょう。インタビューする人もされる人も、単なる時間の消費で苦痛以外の何ものでもなく終わってしまうかもしれません。
商品開発についてのインタビューを成功させるには、開発する商品の効能について事前に仮説を立て、その仮説を検証するための質問項目を練っておく必要があります。仮説検証を進めていく過程のインタビューなら、もしかしたら新たな発見があるかもしれません。開発者が考えていなかった、欲しい機能や使用するシーンをインタビュイーが答えてくれるといったことです。これが100%を超えた分の付加価値です。
100%にプラスアルファの付加価値が加わることで商品としての価値は一層高まります。インタビューで、何らかの答えが欲しいあまり、仮説もなくやみくもに質問を繰り出すだけでは、答えを探しているだけに過ぎず、プラスアルファの付加価値を引き出すことはできません。

さて、購入した商品にしろ、あるいはこれから開発する新商品のインタビューにしろ、お金や時間を使うわけです。お金や時間は貴重な資源です。資源を使うということは、見方を変えればすべて投資活動と捉えることができます。投資したからには、付加価値を含めたリターンを得たいものです。
リターンを最大化するためには、原資となる資源を十分に使い倒すことと、事前に勉強して仮説を構築することが欠かせません。単なる消費にならないように、利回りを意識して仮説を立て、それを検証する行動を起こすと、100%プラスアルファの付加価値が得られる確率は上がります。

参考文献:これが「買い」だ:私のキュレーション術