他人には決められない正解

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今回は本の紹介になります。「自分だけは特別で、実は死なないのではないか」――そう考えている人は、意外と少なくないそうです。何を隠そう、私自身もできればそうであってほしいと願っている一人です。正直、死ぬのは怖いです。だから、何の根拠もないのですが、自分だけは特別なのではないかと考えたくなるものです。要するに、ただの願望です。もっと率直に言えば、死にたくないということです。死ぬのは誰だって怖いものでしょう。生きていれば体験できたはずの、数々の楽しいことがなくなってしまいます。それだけではありません。人生でやり遂げたいことがあります。それを達成しないまま、道半ばで強制終了させられるのは耐え難いです。挑戦して敗れるなら、まだ納得もできます。しかし、戦わずして敗北するのは、どうにも腑に落ちません。ところで、本当に自分だけが特別なのでしょうか。この問いの答えは、少なくとも100年後には出ているはずです。つまり、時間の経過を待つしかありません。それまでの間に、そもそも死ぬとは何なのかについて考えておいて損はないでしょう。

多くの人は「死ぬこと=悪いこと」だと思っています。では、それはなぜでしょうか。何を根拠に悪いと定義しているのでしょうか。そして、それは誰にとって悪いことなのでしょうか。まずは、死ぬことについて、あらゆる角度から考察してみたいと思います。どのような状況であれば、死ぬことは悪いことになるのでしょうか。逆に、場合によっては、死ぬことが当人にとって良いことになる可能性はないのでしょうか。死ぬことが良いのか悪いのか、結論を出すのは、他人ではなく結局は自分自身のはずです。たとえ明確な答えが出なくても、一度は真剣に考えておいた方がよいテーマだと思います。

結論を出す前に、ぜひ考えておきたいことがあります。それは、これまでの固定概念だけで、死ぬことを定義してきたのではないかという視点です。常識を疑うことは、最適解を導くうえで欠かせない思考パターンです。先に述べたように、自分だけは特別だと信じ続けるのも一つの生き方でしょう。しかし、古今東西を探しても、200年生きた人間は今のところ見当たりません。将来、寿命が延びて150年くらい生きられるようになるかもしれません。それでも、どれだけ寿命を延ばせたとしても、いつかは必ず死ぬと思います。だからこそ、時間は有限であり、尊いのです。

奇跡的に授かった有限の命を、どう使えばいいのでしょうのか。これは、避けて通れない問いだと思います。本書は、そのための視点を与えてくれます。ただし、唯一の正解は本の中にはありません。最終的に答えを出すのは自分自身です。自分が納得できたなら、それが正解です。納得できる人生にするために、挑戦していきましょう。もし人生に疲れているなら、一時的に休憩を挟めばいいのです。生きることから完全に離脱するのは、命の燃料をある程度燃やし尽くしてからでも遅くはありません(せっかく満タンで生まれてきたわけですから)。振り返ったときに、「それなりに悪くなかったな」と思えれば、それで上出来ではないでしょうか。私の場合は「ちょっとやりすぎたかな」くらいを目指していますが。

参考文献:「死」とは何か イェール大学で23年連続の人気講義