“今のままでいい”が一番危ない
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若者が新しい概念をもたらしてくれることは多く、世の中の流れに敏感であるとも言えるでしょう。一方で、単に流行に踊らされているだけという側面も、残念ながら否めません。おじさん・おばさん世代の価値観ではもはや理解不能に思えることもあります。否、理解できないのではなく、理解しようとしないのかもしれません。
私自身、いわゆる若者世代から最新のトレンドを聞いて驚かされることもあります。はじめは面食らうものの、「最近の若者にはこういう考え方もあるんだな」と、いったん受け止めてから冷静に評価するようにしています。
新しいことが常に正しいとは限らない。 取り入れるかどうかは、自分の判断軸で選別すればいいだけです。 良いと思えば取り入れればいいし、そうでなければ取り入れる必要はありません。重要なのは、取捨選択するための思考能力を持ち続けることです。
人間は環境に適応して進化してきました。だから、今の若者がそうなっているのは、今の社会が彼らをそうならざるを得ないようにしているだけの話でもあります。とはいえ、それが本当の意味で「適応」と呼べるのか、疑問に感じることもあります。
もちろん、どんな人生を歩むかはその人の自由であり、他人がとやかく言う話でもありません。ただ、残念に思うことがあるのも事実です。 特に、考える力が失われつつあることには危機感を抱きます。
男性に至っては、去勢されているのではないかと思うようなケースもあります。草食系、妻が大黒柱でも構わないといった価値観――もちろん、個人の自由であり、悪いことではありません。ただ、器が小さくまとまりすぎていると感じているのは、私だけではないはずです。
内向き・下向き・後ろ向きとは、よく言ったものです。
このような状態では、近隣アジア諸国に後れを取るのも当然でしょう。まだコロナ禍が始まる前の2019年末、私は中国・上海を訪れました。その3年後、日本はGDPで中国に4倍以上の差をつけられ、背中も見えない状態にまで引き離されました。2024年には、ついにドイツにも抜かれ、日本は世界第4位に転落しています。
私が上海の街に降り立った瞬間に感じたのは、「これはもう完全に負けている」という圧倒的な実感でした。数字ではなく、肌で感じたのです。絶対に勝てない。 経済規模だけが全てではありませんが、「もっと良くしたい」という気持ちを持つことは、決して悪ではないはずです。
このまま「去勢されたような人」が増え続ければ、経営が立ち行かなくなる会社も増えてくるでしょう。さらに言えば、国家の存続すら危うくなるのではないかとさえ思っています。
なぜ、欲を持たなくなったのか?
目の前に課題があって、それを放っておいても自然に解決されるわけがありません。「どうすれば良くなるのか」と考える必要があります。理想やあるべき姿を目指して、思考を止めてはならない。
「自分の器はこの程度だ」と決めつけてしまえば、背伸びすることもなくなり、成長の余地も生まれないでしょう。
世の中は弱肉強食です。強者、つまり環境に適応できた者だけが生き残ります。これはこれまでも、これからも変わらない原則です。
しかし、環境適応とは、単に流れに身を任せることではありません。
環境を理解し、上手に活用し、結果を出すための思考と行動を持つことが本来の適応のはずです。
流れに任せているだけでは、いずれ滝壺に落ちるか、海を漂流するだけの存在になってしまう。そんなのは適応ではなく、ただの無抵抗な流され方です。
さらに言えば、遺伝の世界でも淘汰は起きています。日本人女性の間では、日本人男性ではなくグローバルなパートナーを選ぶ傾向が増えているというデータもあります。去勢されたような思考や姿勢は、遺伝的にも残りにくくなるということです。
パートナーに選ばれなければ、自分の遺伝子はその代で終わってしまう。
選ばれるのは、より強く、前向きに生きようとする者。つまり、生きる力を持った者だけです。
流されるのではなく、常にファイティングポーズを解かないこと。高みを目指して挑戦し続けるからこそ、自分の人生と言えるのではないでしょうか。新しいものを取り入れることは悪くありません。ですが、それを目的化してしまうのは違います。
新しいものが良いか悪いかは、事実としてしっかりと受け止める。
そして、そのうえで自分はどう生きるのかを考えるべきです。挑戦をやめた瞬間、人はただの漂流物になります。
