人の時間は、すべてのサービスが奪い合っている
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デジタルは必要ですが、万能ではありません。というのも、まず理解しておかなければならないのは、昨今のデジタル化の波に乗って、デジタルツールさえ使えば魔法のように何でもできる、と思わないことです。デジタルにはデジタルの良さがありますし、出来ることと出来ないことがあります。デジタルにはデジタルが得意とする領域があり、それを上手く使うことが大事です。逆に、アナログにはアナログの得意領域があります。
従って、自社の商品を売るには、どの場面でどの方法を使うのが有効なのかを考える必要があります。目的を見失ったまま、「とにかくデジタル化」という状態にならないことです。自称DX部門が幅を利かせて、デジタル化そのものが目的になってしまうケースも見かけますが、それでは本末転倒です。また、先にも書いた通り、デジタルに対応できれば何でも売れるというわけでもありません。デジタル媒体であろうがアナログ媒体であろうが、売れないものは何をやっても売れないのです。必要条件は、商品(サービス)がユーザーの満足度を満たせることです。言い換えれば付加価値が高いということです。完成度がいまいちな付加価値の低いものが、ユーザーから理解されるはずがありません。要するに、「あなたはお金を払ってまでポンコツ商品を買いますか?」という話です。まあ、普通は買いません。
お金を払って買ったものが、ユーザーにとってその対価に見合う価値を持っていなければ、すぐクレームになります。仮に優れたマーケティング手法を駆使して、一時的に付加価値の低い商品が売れたとしましょう。しかしそれは一時的な話で、すぐにまた売れなくなります。市場競争にさらされれば、やはりダメなものから淘汰されていきます。逆に言えば、消費者として粗悪品を掴まされないためには、市場競争の中で生き残っている商品を買うのが一番確実です。競争に耐えているという事実が、ある意味品質保証のようなものだからです。
何事もまずゴールから逆算することです。繰り返しになりますが、デジタル化がゴールではありません。あくまでデジタル化は手段です。私たちがネット環境で過ごす時間は、年々長くなっています。2025年12月のある調査によると、世界の人々は平均して1日6時間45分をスクリーン上で過ごしているそうです。南アフリカでは9時間24分にまで達しています。米国の成人の平均は7時間2分。Z世代に至っては1日平均9時間以上という調査結果もあります。スマホを開けば、SNS通知、メール、動画、ECサイトなど、次から次へと時間を吸い取っていきます。
オフラインでも、電車移動、美容院、カフェ、買い物…と、どこかに時間を投下しています。
睡眠やボーっとしている時間まで含めれば、24時間365日、人は常に何かに時間を使っています。言い換えると、一人の人間の時間を、この世のあらゆるサービスや出来事が奪い合っているという構図です。
では、あなたが売ろうとしている商品やサービスは、ユーザーのどの時間に入り込むのでしょうか。正直なところ、中途半端なサービスが入り込む余地はほとんどありません。人間の時間をどれだけ独占できるか、という競争が起きているからです。あなたやあなたの会社のサービスの競合は、同業他社だけではありません。この世のあらゆる出来事が競合になります。SNSも動画もゲームもカフェも睡眠も、すべて競争相手です。なかなかの激戦区です。
そんな競争が激しい時代に、中途半端な商品が入り込む余地はあるでしょうか。冷静に考えると、答えはかなりシンプルです。商品力を研ぎ澄ませておかなければ、勝ち残ることはできません。ユーザーにとって高い付加価値があるものかどうか。結局のところ、それに尽きます。少し身も蓋もない言い方ですが、売れるものしか売れない。ただ、それだけの話なのだと思います。