主語を「わたし」から「わたしたち」へ
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今回は書籍の紹介になります。本書は『嫌われる勇気』の続編として書かれた、自己啓発の源流とも言われるアドラーの教えに基づいた一冊です。人の悩みは、すべて根っこの部分でつながっており、最終的には対人関係に行きつくと言われています。その対人関係における悩みの根底には、相手の「五つの問題行動」があるというのがアドラーの考え方です。ただ、やみくもにその問題行動をやめさせようとしても、うまくいかないことが多いものです。なぜなら、相手がなぜそのような行動を取るのか、その目的を理解していなければ、突破口は見えてこないからです。その「五つの問題行動」とは、以下のように段階的に現れると言われています。
- 賞賛の欲求
- 注目喚起
- 権力争い
- 復讐
- 無能の証明
要するに、人は皆自分を認めてほしいのです。一部のSNSなど、ほぼその目的だけで使われているのではと思える場面も少なくありません。(“いいね”がつかないだけで不安になるような時代ですから…)この事実を理解することがまず大事です。出発点はいつも現状把握から。これはビジネスでも対人関係でも同じですね。
たとえば、問題行動をやめさせたいのであれば、まずは相手自身を認めてあげることです。どんな相手であっても、尊敬の気持ちを持つこと。これが認めるという行為の本質です。もちろん、本を読んで理屈を学ぶことも大切です。しかし、敬い、尊ぶというような人間力を本当の意味で鍛えるには、やはり実践しかありません。机上の空論ではなく、実務への落とし込みが必要なのです。有名な言葉に「汝の隣人を愛せよ」というものがあります。運命の出会いがなければ愛情を示せない——なんて言い訳は、ただの逃げです。愛情を示す力が足りないことを出会いのせいにしているだけです。それは、「まだ本気出してないだけ」理論と同じくらい、説得力が薄いわけです。
誰が誰に対しても、愛情を持って接することは可能です。これは心理的な適性の話ではなく、単なるあなたの意思決定の問題です。愛情を持つという行為は、極めて能動的な行為です。自分の意志さえあれば、いつだって選び直すことができます。そして、最終的に私たちは気づきます。主体性を発揮するしかないという現実に。以前に別の心理学書でも読みましたが、「世の中は、考え方次第でどうにでもなる」と書かれていました。結局のところ、すべては自分の解釈次第ということでしょう。
主体性を発揮し、相手に愛情を持って接することで、あなたの人生の主語が変わります。「わたし」でも「あなた」でもなく、「わたしたち」になります。これが、幸せになるための入り口なのだと、私は思います。
そして、その意思決定をするには、ほんの少しの勇気が必要です。恥ずかしがっている暇などありません。「もっと良い出会いがあるはずだ」と理想ばかり追い求めても、何も始まりません。いつか理想の出会いが…と、青い鳥を追いかけてもしょうがないのです。今ある環境で、幸せになると決断すること。それこそが、本当の幸せなのでしょう。
他人のせいにして逃げるのは簡単です。でもそれでは、何も変わりません。現実から目をそらさず、自分自身としっかり向き合い、自分の責任で幸せをつかみ取る。これは、プライベートでも、仕事でも、変わらない真理です。時代がどれだけ進化しても、人間という動物である以上、根本の原理原則は変えようがありません。この世の物理法則と同じです。
「自分にもっと合った、良い会社があるはずだ」——それも、幻想かもしれません。結局は、今いる場所で骨をうずめる覚悟(勇気)があるかどうかにかかっています。現状に満足できない原因は、突き詰めれば主体性のない自分にあるのです。
