マルチステージ時代
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いつからでも人生を再スタートする柔軟性を持つことが重要です。なぜなら、人生は長くて険しい超長期戦となるからです。「人生100年時代」と聞いて、皆さんはどう感じるでしょうか。「もっと長く生きたい」と思う人もいれば、「それだけしかないのか」と感じる人もいるかもしれません。しかし、寿命がかつてないほど長くなっているのは事実です。さらに今後寿命が延びるという予測もあれば、逆に限界点に近づいているという意見もあります。果たしてどちらになるのかは、これからの人類が証明することでしょう。
2021年に生まれた人たちは、50%以上の確率で105歳以上生きると言われています。平均寿命が85歳前後で設計された現在の社会では、約20年分の時間が余ることになります。当然ながら、これまでの「教育」「仕事」「引退」の3つの人生ステージだけでは機能しなくなります。この余剰の20年を引退後の隠居生活で埋めるには長すぎるため、多くの人が仕事の期間を20年延ばすことになるでしょう。かつては、平均寿命85歳時代の3つのステージは年齢とリンクしていました。
しかし、仕事の期間が大幅に増えることで、旧ステージが機能不全に陥る要因となっています。そのため、人生100年時代では、より複雑で多様化した「マルチステージ」の登場が必要とされています。今回読んだ本では、新しい3つの人生ステージが紹介されています。「エクスプローラー(探検者)」「インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)」「ポートフォリオ・ワーカー」の3つです。この新しいステージは年齢とリンクせず、相関関係がなくなります。
つまり、今後は年齢ではなく、新しい人生ステージが人を評価する指標になると言われています。例えば、ある人は40歳で教育のステージにいるかもしれませんし、50歳で仕事をしていてもベテランではなく新人の場合もあります。旧ステージでは40歳でも50歳でも多くの人が「仕事のステージ」にいましたが、新ステージでは年齢を聞いただけでは、その人がどのステージにいるか判別できなくなるのです。年齢ではなく、マルチステージのどこに属しているかが人を評価する基準となり、これこそが個人の多様化の結果です。
すなわち、究極の「個」の時代が到来するということです。私が社会人になったころには、すでに転職が一般的でした。一方で、新卒で入社した人が終身雇用で引退まで一つの会社で働くことのほうがマイノリティになっていました。私自身も転職を経験しましたが、転職先の同僚もほぼ全員が転職経験者でした。このように社会は徐々に新ステージに移行しつつあります。
仕事内容によって必要なスキルは全く異なり、新ステージでは自分のスキルをより活かせる仕事を選ぶことになります。スキルが高いスタッフは重宝され、競合他社に引き抜かれないよう、会社が雇用条件を柔軟に変更するなど、多様な働き方が進んでいくでしょう。これが「個」の時代の到来を意味します。
「個」の時代については、リンダ氏の別著『WORK SHIFT』でも言及されています。
仕事柄、クライアント企業の人材採用の面接に立ち会うことがありますが、面接者と話す中で感じるのは、キャリアアップ志向の強まりです。新卒採用でも「一生一つの会社に尽くす」と答える人は少なくなっています。人生に占める労働時間が劇的に長くなった以上、キャリアチェンジは避けられません。リ・クリエーション(再創造)の機会は、一度の人生で複数回訪れるようになっています。
リ・クリエーションを繰り返す中で、年齢とは無関係に3つの新ステージに分かれていきます。やりたいことやスキルを活かせると感じたら、キャリアを即座に再構築してリスタートする。そのような柔軟さが求められる時代です。
それは大変かもしれませんが、決して悲観する必要はありません。むしろ、自分に合った仕事に出会う確率が上がり、より充実した人生を送れる可能性が高まるのです。すでにそのような生き方を実践している人もいます。主体性を発揮する場が増えれば、未来を楽観的に捉えることができるでしょう。これは私だけの意見ではないはずです。