トップがダメなら会社もダメ

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会社はトップ次第ですべてが決まります。組織は戦略に従うか、あるいは戦略は組織に従うか、色んな意見があります。組織も戦略も相互に作用しあうのは間違いありません。その主従関係は会社によって違うだろうし、置かれている状況や立場によっても違います。しかし、最も重要なのは、その組織にいる人の質が戦略を決め、その人の質はトップによって左右されるということです。従って、組織も戦略もトップによって決まるということです。なぜなら、全員がトップの言動を見て仕事をするからです。会社組織の生殺与奪はトップにかかっていて、トップがダメなら会社はダメになります。よく言われる言葉に、「社長と副社長との距離は、副社長と平社員とのそれよりも遠い」というものがあります。それだけ難しい役割であり、また責任の重い仕事ということです。トップはそう簡単に代わりが務まるものではありません。トップにはそれ相応のリーダーとしての力量が求められるのです。

リーダーとして組織の方向性を決める船頭が誤った道を示すことは、弱肉強食のサバイバル市場では文字通り死を意味します。食うか食われるかのガチンコ勝負に甘えは許されません。
私は、独立する前から数えるとこの8年間で延べ1,000名以上の経営者と面談させてもらいました。それらの会社を見て、あるいは経営者と話をしたことを帰納させると、やはり会社運営が上手くいくかどうかはトップでほぼ決まると断言できます。
経営という仕事は、先行きが不透明な事柄に対して結論を出さなければなりません。4:6で6を取るのは誰にでも出来ます。一方で、2:8で2を取らなければならないこともあります。しかも失敗すると会社がなくなってしまうリスクもあります。これほど重大な責務を担う仕事は、会社から給料をもらっているサラリーマン感覚ではなかなか務まらないでしょう。給料をもらっているという感覚では話にならず、給料は自分の力で稼いでいるという気概が必要です。完全成果報酬型で、且つ失敗したときどうするかの覚悟が決まっている人にしか無理でしょう。リスクを恐れず自分の仕事に責任を持てるかどうかが、トップとしてのあるべき姿か否かです。

これまでに出逢ってきた経営者の中には、創業者のご子息でいわゆる二代目や三代目と呼ばれる人も少なくありませんでした。創業者に比べると会社に対する責任感は低く映ってしまいます。もちろん立派に船頭としてリードできる二代目や三代目もいます。しかし、責任感が低い人には、修羅場をくぐるようなガチンコ勝負の経験がなく、そんな人が会社をダメにします。

あるクライアント企業に対して、外部顧問として進むべき道は示したつもりでしたが、結局はトップ及び組織を動かせませんでした。それは私の提案が絵に描いた餅以外の何ものでもなかったことを意味します。本当に組織のことを考えるならば、そのトップからリーダーの任を解くことが必要だったかもしれません。もうその会社との顧問契約は切れてしまったので今更あれこれ言っても仕方ありませんが。経営者に対して、口で言うのは簡単で表面上は話を聞いてはくれているように見えます。しかし、経営者が本当に腹落ちして気づかない限り、行動に移してくれませんし、組織も変わりません。
健全な危機感を持って経営という責任ある仕事にあたってほしいと思います。組織を生かすも殺すもトップである経営者次第なのですから。

参考文献:会社は頭から腐る