なんとなくで動いたら、だいたい外れる

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一言で言えば、読了したことに達成感を覚えた本でした。お断りしておきますが、ネタバレを含みます。
知人からの強いススメがあり、Amazonで購入しました。注文履歴を見てみると、購入日は2020年4月。そして、実際に読み終えたのは…2021年1月。約8か月間の積読(つんどく)期間を経ての読了です。積み上げて満足していたわけではないですが、なんせ750ページという超大作です。読破するのは、なかなか骨の折れる作業でした。
内容は、名探偵・二階堂蘭子による謎解きの物語。シリーズものの一作で、私は他作品を読んでいないため比較はできませんが、例の知人いわく「これが最高傑作」とのお墨付きでした。そこまで言われたら…と覚悟して読み始めたわけです。

物語の舞台は鹿児島の離島です。なんと地図にも載っていないという機密性の高い場所で、第二次世界大戦中の旧日本軍の極秘研究を起点とする「迷宮計画」の延長線上で、今なお不可思議な出来事が続いている…という壮大な設定です。
次々と常識外れな事件が起こる中で、そんなわけないだろうとツッコミたくなるところを、蘭子が冷静に、かつ徹底的な論理と証拠で解き明かしていきます。そこがすごい。というか、羨ましいものです。
この徹底的な論理と証拠の姿勢、実は現代のビジネスシーンでも応用が効くと思っています。特に、不確実性の高い今の時代──何が正解で、何が間違いかは、最終的に結果を見てからでなければ分からないケースも多くなりました。しかし、起こる出来事にはすべて因果関係があります。

なんとなく上手くいったんだよねで済ませるわけにはいきません。なぜ結果が出たのか。その要因は、往々にして結果が出る前から、何らかの予兆として現れているものです。だからこそ、行き当たりばったりでなく、起きた事象をつぶさに観察し、構造化して因果を読む姿勢が重要です。いわゆるPDCAを回すことと、本質的には同じではないでしょうか。

ちなみに本作における事件の“因”は、第二次世界大戦の影にあります。戦争の歴史とは、裏を返せば兵器開発の歴史であり、同時に人間の残酷さをも映し出すものです。そして、その現実を直視し教訓として受け止めることが、現代社会を生きる我々の責任だと感じました。要因を突き止め、目をそらさず、改善行動につなげることは、まさにPDCAの根幹です。
ただし、ここで一つ注意したいのが、今は世の中の変化が異常なほど速いという点です。のんびり構えていると、あっという間に時代に置いて行かれます。思考停止して「なんかうまくいってる気がする」ではダメです。たぶんそれは気のせいです。
この作品を通じて、論理と証拠をもとに高速でPDCAを回すことの重要性を、私自身あらためて感じました。読了には時間がかかりましたが(なにせ750ページ)、思考と姿勢の面では、ずいぶん速く走らされた気がしています。

参考文献:双面獣事件