ただ働くか、付加価値を創るか

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現在、会社に勤めていようが、自ら会社を経営していようが、自分が所属する組織の決算書は読めるようになっておいた方がいいのは言うまでもありません。もちろん、専門家のように高度な財務分析ができるようになる必要はありません。ただ、最低限、何が書かれていて、その数値が何を意味しているのか、そして自分の仕事とどう結びついているのかくらいは理解できるようになるべきでしょう。
この最低限の理解があるだけで、仕事に対する意義や視点が大きく変わってきます。数値が意味することを読み取る力を持っていれば、自分の仕事が会社の業績のどの部分に寄与しているのかが分かります。それが重要なのです。
雇用形態も関係ありません。時間給で働いていようが、成果主義で働いていようが、仕事の結果が数値で可視化できるようになれば、その仕事へのモチベーションは格段に上がるはずです。

ダイエットや筋トレにおいては、結果が見えないほど辛いことはありません。それと同様に、無味乾燥な仕事に意味を持たせ、成果を客観視できるようになれば、モチベーションは飛躍的に高まるものです。
そもそも「働く」とは、「傍(はた)を楽(らく)にする」ことが語源だと言われています。傍とは、自分の周りにいる人たち、すなわち関係者のことです。周囲の人を楽にすること、それが働くという行為の本質です。これは、間接部門であれ直接部門であれ、変わりません。関係者をどれだけ楽にできたか、それを数値で可視化できれば、さらに頑張ろうと思えます。無味乾燥だった仕事に意味が生まれるのは、仕事の本質を理解し、成果を客観視できるようになったときです。

こうした意識は、単なるモチベーション向上にとどまらないと思います。どうすればもっと少ない労力で大きな結果を出せるか、効率を追求する発想にもつながります。いわゆる生産性の向上という考え方です。
少し俯瞰して世の中を見渡せば、誰の目にも明らかでしょう。単純作業はAIに置き換えられていくということが。言われたことだけを無思考で淡々とこなす仕事。こうした仕事は、いずれAIに奪われていく運命にあります。より良くするにはどうすればいいか、傍をどう楽にできるか。そうした創意工夫を加えられない仕事は、いずれ機械でも人間でも、誰にでもできてしまいます。逆に言えば、人にしか付加できない価値がある限り、その仕事はなくならないということです。

テレワークが普及して久しい今、出社しない働き方が当たり前になったということは、「これだけ働いた」「これだけ頑張った」という精神論は一切通用しない時代になったということです。求められるのは、ただ一つ、結果だけです。

話のきっかけは決算書の読み方でしたが、伝えたかったのは、読み解くべきは決算書だけではないということです。数値を見て、考え、工夫し、改善し続けることです。数値を高めるための創意工夫ができる人だけが、これからの時代に必要とされるのではないでしょうか。付加価値を生み出せない人は、残念ながら必要とされない社会になっていくでしょう。だからこそ、仕事の意味やゴールを設定し、そこに向かって取り組むことが、結果を大きく左右するのです。

最後に、自分に期待されていることを理解し、それを1%でも超えるアウトプットを出せたなら、あなたのその仕事は勝ちです。

参考文献:決算書がおもしろいほどわかる本 損益計算書、貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書から経営分析まで