「また連絡します」を信じた人の末路
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営業の現場でお客様から「考えます」と言われ、それを真に受けていたら──残念ですが、その営業活動はほぼ終わりです。もちろん、文脈や商談のステージによって意味合いは多少異なるものの、一般に「考えます」は「結構です」とほぼ同義です。いや、もっと言えば、断り文句として最もポピュラーな日本語表現の一つでしょう。実際、私自身の経験からしても、考えますとその場を去った方が、後日購入に至った例は極めてまれです。待っているうちにお客様が考え抜いて決断する…なんてことは、ないとは言いませんが、まぁ期待する方が非現実的です。下手すると、お客様が考え終わる前にこちらの寿命が尽きますよ。
だからこそ、考えますと言わせないための営業設計が必要なのです。お客様にそう言われてから、会心のクロージングトークを繰り広げても、もはや後の祭りです。なぜなら、お客様にとって正論で詰められるほど不愉快なことはないからです。つまり、「言われてから巻き返す」のではなく、「そもそも言わせないようにする」ことが勝負の分かれ目です。
これは営業に限らず、すべての業務に通じる話です。物事が思い通りに進まないとき、その原因はたいてい前工程にあります。後工程で発生したトラブルは、すでに前段階で芽が出ており、それが顕在化したにすぎません。根本を辿ればもっとも重要なのは最初の最初、つまりアプローチリストの段階です。見込み客がいないリストを使って営業をかけたところで、勝負は始まる前から見えている──というか、すでに負けています。ザルで水をすくうようなものです。
究極のマーケティングとは、営業マンの目の前に見込み客を座らせることです。では、そのためにどうすべきか? そこから逆算して設計する視点が欠かせないということです。
仮にリストが悪かったとしても、挽回手段がないわけではありません。闇雲に虱潰しに当たるのではなく、1件ずつ丁寧に精査し、本当にアプローチする価値がある相手だけを選別していけばいいのです。そのうえで、トークスクリプト(営業兵器)を洗練させ、電話(ペイロード)に乗せて、選別済みリスト(レーダー照準)に投下する──もはやこれは軍事作戦です。営業マンは、知的な戦術家であるべきです。
さて、ここからは営業を設計するうえでの大前提を3点整理しておきましょう。
【1】営業はどこまでいっても確率論である
100戦100勝などあり得ません。どんなカリスマ営業マンでも、一定の確率で失注します。そういう意味では、そもそも商談数が足りなければ話になりません。商談を量で回せていない営業は、土俵にすら上がっていないのと同じです。
【2】営業期間が延びれば延びるほど、契約率は下がる
考えますと言った人が後から契約に至る確率は、限りなくゼロに近くなります。営業マンが最も熱量高くプレゼンしているその場が、契約確率のピークです。時間が経てば経つほど、情報も熱量も劣化していきます。いわば商談の鮮度が落ちていくのです。刺身と同じです。寝かせたら旨くなる、なんてことはまずありません。
【3】接触回数は少ないほど良い
理想は即決です。1回の商談で結論を出すのが最も効率的です。もちろん、商品特性によっては即決が難しいこともありますが、それでも3回も4回も通っているようでは、その先に成功は見込めません。お客様との接触回数に反比例して、契約率は確実に落ちていきます。
ちなみに、私もかつて、この場で結論が出ないようであれば、今回は結構ですとお客様にハッキリ伝えたことがあります。もちろん丁寧に、礼節を持って。すると意外にも、お客様の方がその場で覚悟を決めて結論を出してくださることもあるのです。
そして、興味深いのは──即決してくれたお客様の多くは、その後も非常に良好な関係を築けているということです。逆に、決断に時間がかかったお客様とは、どこか距離のある関係にとどまりがちでした。
多くの場合、営業をかけられたその瞬間に、お客様の頭の中ではほぼ結論が出ています。その結論を引き出すには、営業マン側の覚悟が問われます。決断を迫るとき、お客様はそれを感じ取ります。そして、本当に良い提案であれば、相手も応えてくれるものです。
怖がる必要はありません。断られたら、潔く次へ行けばいいのです。それが営業であり、そして確率論なのですから。