営業のデジタル適応

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これまでとは戦い方が変わってきています。「企業とは環境適応業である」という言葉があります。企業に限らず個人も動植物も、厳しい競争社会で勝ち残っていくためには、がむしゃらに頑張ることも大事ですが、環境を上手く利用する方が得策です。
新型コロナウィルスがビジネス環境の変化に拍車をかけ、テレワーク然りオンライン上で仕事が完結できるようになってきました。もちろん、業種や業界によって、或いは業務内容によっては直接人間の手が欠かせない仕事もあります。今回は、営業という仕事のデジタルシフトについて考察してみたいと思います。

今でも、「営業は足で稼ぐんだ」という考えは、まあなくはないです。しかし、足でしか稼げないのかは、一度問うてみるべきです。このご時世なら、置かれた環境を俯瞰すれば、その問いに行きつくはずです。問いに行きついたとしても実行できないのは、心のどこかで「最後はやはり直接対面がモノを言うはず」、や「オンラインでは成約率が下がる」と思っているからでしょう。実際に試してみてから言っていただきたいものです。なぜなら、現実には契約までオールオンラインでやってしまう例もあります。また、オンラインとオフラインで成約率は変わっていないというデータも一部あります。過去のやり方に囚われるあまり、新しいことにチャレンジできないと、自然界の絶対的法則である適者生存(環境適応)から外れることになります。

自社(自分)の営業スタイルを振り返って、上手く環境に適応できていると言えるでしょうか。古今東西、環境に適応できた者だけが生き残れると決まっています。私の生活を振り返ってみても、ほとんどの時間をオンライン上で生活していると言えます。周りを見渡してみて、スマホやPCを見ないという人がどれだけいるでしょうか。営業対象となる人(お客様)の生活がオンライン上にある以上、必然的にデジタルに目を向けざるを得ないはずです。

お客様が商品を認知し、購入してロイヤルユーザーになるまでのプロセスをカスタマージャーニーと言います。このカスタマージャーニーのプロセスでは、お客様はまず広告に触れ、新しい商品やサービスを認知します。興味を持った商品やサービスを調べて情報を得ます。そして、それらの情報を基に購入の意思決定を行ないます。
マスメディアが普及する前は、認知から購入までのプロセスにおけるほぼ全ての情報を営業スタッフが足で運んできました。コロナ前までになると、マスメディアというもので認知、そこから資料請求すると営業スタッフがパンフレットを持って飛んできて商品説明を始め、購入の意思決定までをサポートしていました。しかし、今ではデジタル広告で認知し、購入の意思決定までに必要な情報のほとんどはオンライン上で簡単に入手できます。
人間が足で稼いでどれだけ多くのお客様にアプローチしようが、デジタルのそれと比べると量も質も勝負になりません。情報の媒介物は人間ではなくデジタルになってきています。一方、お客様1人当たりに与えられる情報は、人間の方が質も量も勝るケースもあるでしょう。しかし、それは営業スタッフが完璧に知識武装し、同時に高い人間性も備えた場合に限られます。もちろん、人的資源の開発に経営資源を割くというのも一つの戦略ではありますが、過去の栄光に囚われた盲目的な判断ではなく、環境を考慮してからの判断とすべきでしょう。

自社(自分)の営業活動において、どの部分ならデジタルに置き換えられるかを考え、デジタルでは代替不能なプロセスのみを人間が実行すべきです。これまでとは戦い方が変わっていることを考慮に入れ、上手く環境に適応していただければと思います。営業という仕事も多くのプロセスがデジタルシフトできるのです。

参考文献:インサイドセールス 訪問に頼らず、売上を伸ばす営業組織の強化ガイド