なぜあなたの会社は忙しいだけで儲からないのか

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パレートの法則というものをご存じでしょうか。誰しも一度は聞いたことくらいはあると思います。いわゆるニッパチ(20:80)の法則というもののことです。
ある構成物があったとすると、その構成要素の2割で8割の結果を生み出しているという経験則のことです。周りを見渡してみれば、身近なところでもこの法則が表れていることに気づきます。

例えば、仲の良い2割の友だちと、8割の時間を一緒に過ごしていたり。
蟻の集団では、よく働く蟻は全体の2割を占めていて、それ以外のあまり働かない蟻が8割になるというもの。働き者の2割だけを抽出して別集団を作ると、その集団がまた働く2割対それ以外の8割に再構成されます。
他にも、売上の上位2割の営業スタッフによって会社の売上の8割が生み出されているというのもあります。また、欠陥製品の8割の欠陥が全体の2割の原因による、などです。

前置きはこの辺りまでとします。下の図表1は、兵庫県にあるH社(建設業:主にリフォーム工事で売上げを立てている)のある期間における受注件数とその受注額を可視化したものです。
(図表1)

濃いブルーの折れ線グラフが工事の受注件数で、グレーの棒グラフが累積の売上額です。

表頭の区分1から区分5は受注額のレンジ分けで、図表2の通りです。
(図表2)

図表1をご覧の通り、区分(受注単価のレンジ)が上がっていく毎に、工事件数は少なくなっていきます。ちょうど区分3と区分4の分かれ目の、受注単価が100万円未満なのかそれ以上なのかが、この会社にとってのパレートの法則があてはまる境目になります。図表3は表頭と表側を入れ替え、表側は区分1~区分3、区分4~区分6でまとめたものです。
(図表3)

見事にニッパチの割合に分かれました。

さて、大事なのはここからです。全体の8割を占める数の工事が、売上に対して2割しか影響しないことが分かりました。これら膨大な数の仕事を限られた経営資源でこれからもやり続けていくのかが問題です。
リフォームという仕事は、現地を調査して初めてその実態が把握できます。新築のように、何もない更地にゼロから図面通りに作っていくわけではありません。従って、入念な現地調査とそれに伴った現地合わせのきめの細かな仕事が求められます。そうなると、例え受注額が小さくても相応の手間と労力がかかってきます。受注額に関係なく一定以上の手間と労力がかかるのに、額の小さな仕事の件数が多いのは非効率で、場合によってはいくら時間があっても足りないくらい忙しくなってしまいます。何も考えずに依頼があった仕事を淡々とこなしていくだけでは、骨折り損のくたびれ儲けという言葉がそのまま当てはまる状況に陥ってしまうのです。

以上を踏まえ、対策としては100万円未満の工事を積極的に取りに行かせない力学がスタッフに働くように、会社の制度そのものを変えてしまうことが手っ取り早いでしょう。
例えば、人事評価制度の見直しです。人事については、「功には禄を能には職を」という言葉があります。これは西郷隆盛や徳川家康が言ったとされています。人事の天才である両氏のこの言葉の意図は、功とは実績のことで、それに対し禄(給料やボーナス)で応えるべきだということです。逆に、能力がある人間には、職(役職)を与えよという意味です。

今回は、人事評価のうちの禄(給料やボーナス)に対するインセンティブを少しいじります。給与テーブルで、スタッフの功に対して単価100万円未満の仕事と単価100万円以上の仕事に大きなギャップをつけるのです。どう考えても、100万円未満の仕事は割に合わないなと思わせるのです。
馬鹿の一つ覚えのように、毎回ワンマン社長の鶴の一声で強制させ、いたずらにスタッフとの軋轢を生むのではなく、こうして会社全体の仕組みとして自然に理想の形に向かう(力学を働かせる)よう動機づけをしてやることで、無血開城というかたちに導いてやるのが良いでしょう。

仮にまたニッパチの法則に基づいて工事の構成割合が収斂してきたとしても、区分のレンジはより大きな額にシフトしているはずです。